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そして、今に至る……と言うわけ。
龍之介の冗談に見事引っ掛かり、怒り心頭の私は、彼が何と言おうと一泊分の着替えしか持って行かないと決めた。
龍之介の家に行かないという選択肢もあったけれど、どうせ無理だとわかっていた、私のちょっとした抵抗。
でもその抵抗が、龍之介の怒りに触れたらしい。
車の中では無言を決め込み、私が顔を覗き見てもピクリとも反応しない。
でも信号で停まり、一度だけこっちを見たかと思ったら、
『帰ったら覚えておけ。地獄を見せてやる』
だって……。病人の私に地獄って。
前に暴走族の総長って言ったけど、あれ訂正するよ。
きっとどこかの闇の黒組織の幹部でもしてたんじゃないの? じゃなきゃ“地獄”なんて言わないでしょっ!!
怒った顔をして腕を組み、ソファーに深く座っている龍之介の隣に腰掛けた。
「つ、堤所長?」
「龍之介っ」
「……龍之介。って、どうして私が堤所長のことを“龍之介”って呼ばないといけないんですかっ?」
「菜都の部屋で、約束しただろ」
「あれは爽やかな堤所長でしたから、思わず従ってしまったと言うか……。無効ですっ!!」
「なんだよっ、爽やかな俺ってっ!! どっちも俺だって言ってんだよ。だから決定な」
勝ち誇った顔をしてそう言い放つと、ソファーにふんぞり返った。



