ドアから手を離し、振り返ると堤所長見る。
「それは変更できるんでしょうか?」
帰ってくる答えはわかっていても、最後まで足掻いてみる。
しかし、そんな私の考えもよそに堤所長は私にピシッと指さすと、今日一番の笑顔を見せた。
「これは決定事項。菜都に反論の余地なし。菜都は俺の、大切な部下だからね」
“大切な部下”
その言葉に、さっきの“好きだよ”がリンクする。
部下だから気にかけ、部下だから世話を焼く。
部下だから、好き──……
だったら相手が未歩ちゃんでも、同じ事をしたの? 大切な部下だから?
考えれば考えるほど、堤所長の言いたいことがわからなくなる。
でもきっと、ひとりでいることは許されないんだろう。
「着替え、取ってきます」
そう言って、ひとり車から降りると、堤所長も運転席から飛び出した。
「俺も行く」
私と肩を並べると、サッと左手を取られる。



