「キャッ!!」
突然の行為に、身体中に電流が流れる。痺れる身体に肩をすぼめると、可笑しそうに笑う、堤所長の声。
「菜都って敏感。こんなことで感じてたら、また熱上がるぞ」
熱が上がるようなことしてるのは、堤所長でしょっ!!
自分で勝手にしておいて、その言い草はどうよっ!!
怒りからなのか、病気からなのか。それとも、まだ耳に残る感触からなのか、本当に熱が上昇していくのがわかる。
「菜都、顔が真っ赤」
「誰のせいだと思ってるんですかっ!!」
病人でしかも堤所長のことが好きな私のことを、好き勝手弄ぶこの人はやっぱり悪魔。
その目の奥に何かを隠して私を翻弄するのには、どんな意味があるの? もし本当に面白半分でやっていることなら、そろそろ勘弁してもらいたい。
鏡越しに睨みつけると、堤所長の表情が真面目なものに変わり目が僅かに揺れた。
でもそれも一瞬───
眉毛をピクッと上げていつものように妖しく微笑むと、私を後ろから抱きしめた。
「怒った顔も可愛いな。好きだよ、菜都」
私の顎に指を当て顔を少し持ち上げると、チュッと音を立ててキスをした。
“好きだよ”と言われ思考が止まった私は、そのキスを抵抗なく受け入れてしまう。
ゆっくり唇が離れると、「さっ、病院行くぞ」と言って呆然としている私の手を取り、スタスタと歩き出す。
私はただ引っ張られるように、堤所長の後をついていくのが精一杯だった。



