「何見惚れてんの? 俺のこと、カッコいいとか思っちゃってるワケ?」
口角を上げてニヤリと笑うと、私に近づく。
この人のこの自信、いったいどこからやって来るんだろう。
「堤所長。どんだけ自意識過剰なんですか? み、見惚れてなんかいないし……」
自分の思っていたことを簡単に見破られてしまい、思わず憎まれ口を叩いてしまう。きっと顔は、真っ赤になってるだろう……。
「あっそ。それならそれでいいけどね。もう行けるのか?」
「あっ、はい。でもやっぱり、素っぴんで行くんですよね?」
もう一度、鏡で自分の顔を見る。
病気のせいで肌に艶はなく、眼の下にはクマもある。見るに耐えない顔だ。
「病人のくせに、顔なんて気にするなっ。普段と大して変わらないだろう」
グサッ!! 今の言葉に、胸が痛む。
それって普段もブサイクってこと? ちょっと酷くない? 私って、そんな風に見られていたんだ。
ちょっとショックで小さく肩を落とすと堤所長が私の背後に立ち、両手を肩に乗せた。
「なんか勘違いしてない? 俺は、いつもの菜都も今の菜都も、どっちも可愛いと思ってるんだけど?」
耳元に唇を寄せて囁くと、耳朶をパクッとくわえた。



