夢の中で、誰かが私の頬を撫でる。
それは温かく優しく頬を包み込み、指先で頬をなぞると徐にそれを摘み……
「いででででっ!!」
急激に襲われた痛みに、飛び起きたっ。
「よくもまぁ俺の家で、大イビキかいて寝れるよな」
「つ、堤所長っ!! もしかして今私の頬を抓ったのって……」
「あぁ俺だけど、何か?」
夢と現実がごちゃ混ぜで、状況を理解するのに時間が掛かる。
会社に行ったはずの堤所長が、何故ここにいるの?
どうして私は、頬を抓られたの?
ところで今は何時?
わからないことだらけで、堤所長の顔を見つめることしかできない。
「何? そんな潤んだ目で俺を見つめて。襲って欲しいとか?」
「お、お、襲ってほしいわけないじゃないですかっ!! 何言っちゃってるんですか、堤所長は……」
目が潤んでいるのは熱のせいで、決して堤所長を欲しているわけじゃないっ!!
手の甲で目をゴシゴシ擦ると、その手を取られる。
「擦るなよっ。まだ熱下がってないな。仕方ない、病院行くぞ。その帰りにお前の家に寄って、服とかもろもろも取りに行かないとな」
そう言うと立ち上がり、「支度しろ」と言って部屋から出て行ってしまった。
なんかよく状況が飲み込めないけれど、ここは堤所長の言うことを聞いておいたほうが無難そうだ。



