「それにキスやハグなんて、あいさつみたいなもんだろ。減るもんじゃあるまいし」
ここは欧米かっ!? れっきとした日本だっちゅーのっ!!
「減るんですっ!! ホント堤所長って、横暴で身勝手で女の気持ちなんかこれっぽっちも考えない、何考えてるのか全くわからない最低の人ですねっ!! だから一緒に住むはずだった女性に逃げられるんですよっ!!」
しまったっ!! 勢いに任せて、言わなくてもいいことまで言ってしまった気がする。それも最後に言い放った言葉は、完全な私の推測にすぎない。どうしよう……。
私に言いたいだけ言われてしまった堤所長はというと……。
私を遠い目で見つめ、立ち尽くしていた。
やっぱり地雷踏んだかしら。
少し言い過ぎたかもと心配になって身体を近づけると、急に眼力の強くなった堤所長が私の肩をガシッと掴んだ。
「菜都さぁ、言いたいこと言ってくれちゃって、俺のこと上司だって覚えてる?
横暴で身勝手、女の気持ちがわからない? 男の気持ちもわからないお前に、そんなこと言われたくないね」
冷たくそう言い放つと、私の身体をベッドに横たえた。
「ホントに菜都ってバカ。また熱上がってきてんじゃん。そんなんで、よく俺に張り合おうとしたよな。俺には永遠に勝てないって、自覚したほうがいいんじゃない?」
そう言うと私の手からタオルを取り上げて、またおでこに乗せてしまった。



