「言いましたけど、それが何か?」
至って冷静に、且つ強気な態度を崩さずに言うと、堤所長の顔つきが一気に変わる。
「何? 俺に喧嘩うるき? 上等だ。その喧嘩かってやる。あとで後悔しても、知らねーからな」
ひえぇぇぇええーっ!! もうすでに後悔してますぅ~。
だって、その顔にその声、怖すぎる……。
もしかして、堤所長。若かりし頃は、暴走族の総長やってたんじゃないっ。喧嘩売るとか買うとか、普通の人はそんな言葉使わないでしょ?
でもこの喧嘩、私からふっかけたんだから、ここで引く訳にはいかない。
震える身体に鞭打って、拳を握る。
「つ、堤所長は、どういうつもりで私をここに連れてきたんですか?」
「別に、特には理由はない」
「理由もなく連れてきて、キス……したり抱きしめたり。私の気持ちを弄んで、そんなに楽しいですか?」
「弄んでるって? 変な言いがかりは止めてくれっ」
言いがかり? どの口がそんな大嘘叩くのよっ!! 十分、弄んでるじゃないっ!!
あまりの言い草に、呆れて物が言えない。また熱が上がってきたのか、頭までクラクラするよ。



