「痛いっ……」


頭を抱えうずくまると、堤所長がベッドの上に乗って近づいてきた。そして私の肩に触れるとそのまま抱き寄せて、私をすっぽりと包み込んでしまった。


驚きから後頭部の痛みも忘れて、堤所長の腕の中で固まる私。


どういうつもりで抱いているの?


離して欲しいような、このままでいて欲しいような……。


ふたつの気持ちに苛まれて、どうしたらいいのかわからない。


「ホントに菜都って、変わった女。あいつとは正反対だな……」


ボソッとそう呟くと、私の後頭部を撫で始めた。


変わった女は余分だよっ。でも“あいつ”って誰?


あいつ……。その言葉に、リビングの光景を思い出す。


彼女はいないと言っていたけれど、一緒に住んでいたか一緒に住むはずだった人がいたんだよね?


その人と私を比べるの? どうして?


ふと顔を横に向けると、今私たちが乗っているベッドが目に入る。


クイーンサイズのベッドだろうか、かなり大きい。真っ白な掛け布団のシーツには小さな小花が刺繍されていて、縁取りはレースが飾られている。


これもふたりのためのもの?


そこでこんなふうに抱かれている私って……惨めだ。