水ノ宮の陰陽師と巫女

そして月日は2ヵ月流れ、今日は12月8日。

水ノ宮神社で毎年行われる針供養の日を迎えた。

楓は、持ち帰っていた学校の針を入れた缶の封印を解き、さらに中にある、封紙で封印した針の封印を解いた。

学園からは家庭科の黒須先生と、佳織が来ている。

巫女装束に身を包んだ楓の元に

「楓ーー!」

大手を振りながら、佳織が境内を走りながら楓のそばに来た。

「こらっ!境内の中、走らないの!」

と、ちょっぴり大人びた声で佳織を叱ると、てへっと笑いながらごめんと謝る佳織だった。

「針供養のこと、黒須先生に聞いてきちゃった。
――本当にごめんね。楓……私のせいで迷惑かけて……。あれからあの変な女も現れなくなってね。そしたら、部屋の四カ所に楓が貼った符が、光ったように消えてったように見えたの。あれって何?」

大きく息を吸いニッコリと笑った楓は

「もう、結界自体が役目を終えたから消えたのよ。元々、出針って、不吉を意味していることだけどね。急いで針仕事をするとケガをするってことなのかもしれない。本当の言い伝えは良くわからないけどさ。いつの時代から今まで伝わってるのかはわからないけどね……。
――もう、これに懲りて、出針しちゃだめよ」

うふふと笑うように、再度釘をさすように楓は言った。

「うん。迷信って馬鹿にしないよ。もう本当に!あんなのコリゴリだよぉ」

反省した佳織は、もう出針はしないといい、迷信を馬鹿にしないと言った。


黒須先生も楓の元に来て、先に持っていった缶の針のみだったことと、預かってくれたことに礼を言われた。

楓はちょっと照れながら「いいんです。うちの神社の毎年の行事ですから」と言って、黒須先生から逃げた。

夕方になり、無事に針供養も終わった。