水ノ宮の陰陽師と巫女

「雅人……悪いけど力貸してくれる? 」

「あ、あぁ……いいけど、一体どうやって引っぺがすつもりなんだよ」

楓は無言のまま、考えていた。

何も策なんて考えてない。だけど……このまま放っておくわけにはいかない。学園の中にある邪気とも瘴気ともつかないあの黒い影を。

「真理、あなたの望みはなんなの……? 」

突如として声が変わった。絹のようにしなやかな大人の女性の声が

「ふん、お前の血を頂くまでだ……」

真理の体が青黒い光で包まれていく。

カタッ!カタカタカタッ!

その青黒い光の範囲の中にあるものが静かに、段々と音をたてその数が増えていく。

真理の周りは風が吹き始め、真理自身の髪が生き物のように、伸び楓たちを襲い始めた。

「陣」

とっさに前衛を防御するために結界を張った。

だが、次々と真理の周りにあるものが、勢いをつけてこちらに向かって飛んでくる。

「結界が持たない!」

楓が作った結界を盾に、雅人をかばうとなると一人分の結界で二人を防御するだけの強度は足りなくなる。

雅人は横に走り、符を放った。

「我の望む戦う者 前にありし陣を破りし 前に進め」

放った符から、幾多の光の細い筋が、真理に向かっていった。

「雅人!真理に傷をつけたらダメ!」

慌てて楓は大声で攻撃をやめるように言ったが、光の筋は真理に向かって今にも突き刺さろうとしている。

だが……

真理が髪をうねると、光の筋はすべて払い落とされた。

それと同時に、真理の髪が縄状になり雅人に襲い掛かる。