水ノ宮の陰陽師と巫女

「多分、また来るんじゃないかと思って式神を放っといて正解だったわ。……真理、あんた一体私に何か恨みでもあるの? 」

楓は視線をそらさず、血を欲しがり殺したがっている。なぜそこまで恨まれる……?

真理の表情が変わり、顔が炎のように真っ赤になり

「あったりまえでしょう!あんたなんか嫌いよ! 私のないモノを全部持ってる。いつも……いつも、あんたの周りには人がいっぱいいる。なんでよ? 私だって、あんたと同じクラスじゃない。なんで楓ばっかりにみんな……みんな……。

――だから、願った。私も楓みたいになりたいと、みんなの中心にいたいと。そうしたら『あの人』が私に前に現れたわ。
――出針を使った佳織とそれに対処している楓の血を持って来れば願いを叶えてくれるって」

怒りと憎悪に満ちた真理の言葉がずっしりと空気を重くする。

「だけど、楓……。なんで邪魔するの? 佳織の血、もらおうとして結界を破ったのに……。もうすぐ……もう少しだったのに!」

怒り狂うように最後は金切り声をあげ叫んだ。


その言葉を聞いた雅人は、懐からスッと符を引きだし、呪言を唱え始めた。

が、楓はずいっと右手を雅人の前に差し出し、制止させた。

「なんで止めるんだよ!」

「みぞおち……」

楓は呟くように制止の手をそのままにし、雅人に見るように促した。

元々真理はおとなしい女子生徒だ。一人でいることも確かに多かった。だからと言って私を恨むようなことは一度もなかったし、話しかけたら普通に話してた。

なのに……今になってなぜ……と思いながら、真理のみぞおちの辺りに渦巻く黒い影らしきものを見つけ、考えていた。

もし、裏の闇の心に……あの渦巻いている黒い影、≪邪気≫のようなものが、入り込んでしまったら、人が変わってもおかしくはない。

「まさか……。あの瘴気なようなものに操られている……と……? 」

「可能性はあるわ。だから引っぺがす!」