おじいちゃんの結界霊符、あんなにスッパリと刃物で切れるわけないのに……ということを聞こうとした。

「うむ……。普通は、霊符が見えていればハサミがあれば切ることはできる。じゃが、あの娘が切るはずはなかろう? 」

そうなのだ。あんなに怯えている佳織が霊符を破るはずなどない。
だとしたら、後考えられるのは……。

「あの結界の中に、操り針子は、入り込む余地はない。だとしたら他の者、お前たちが言っている『主と呼ばれる者』が切りはがしたと考えるのが普通じゃろう……」

確かに祖父の言うとおりだ。佳織の部屋に『主と呼ばれる者』が入り込み、破ったとしか考えられないのだ。だとしたら、『主と呼ばれる者』は……あの人しかいない。

まだ姿は見ていないが多分アイツだろう……と、ほぼ楓は『主と呼ばれる者』を判断した。

「おじいちゃん、ありがとう。今夜、全て片付けるから」

「うむ、任せたぞ。
――それより楓……、お前『金人結界』を使ったな? 」

「え? うん、使ったけど? 」

「そこまで強力な結界を使うなど、お前はバカか! 」

「え? なんで? 」

「金人さまとはな……金人さまとはな……。お前、もう少し勉強せねばならぬな。この仕事が終わったら、蔵にある巻物、全部読むことじゃ!良いな」

「はぁーい、それじゃ、少し寝るから」

部屋を出て、父に夜出かけるので、夜食を頼んで、楓は自室に戻り、目覚ましをかけて仮眠を取り始めた。