缶を持ちそのまま学園の玄関に向かい、楓はまっすぐ家に帰った。

祖父に話があるからだ。

昨日聞き損ねた、祖父の結界霊符のことを聞くつもりだ。

「おじいちゃん、今いい?」

「なんじゃ?お前から聞きに来るとは珍しい。術のことか? 」

楓は自分から祖父に訊ねようとするといつも、『術は上達したか、術を教えようか』というのには、少しうんざり気味だった。

「術のことじゃなくて……」

持ち帰った缶を祖父の前に出した。

「封印した缶、持ち帰ってきたの。やっとだけど」

一呼吸ついてから楓は続けた。

この中に一本だけ、封紙で封印した針が入っていること。その針は、異界に引き込まれた日に見つけたもので、邪気というよりは異質な感じがしたから封印し、缶に入れて缶ごと封印したことを説明した。

「ふむ……。まぁその針が操り針子のものかもしれぬという確証はないが、そうかもしれぬというのもある。懸命な判断じゃな。だが、操り針子を倒さんと、この缶の封印を解くことはできんじゃろう……」

と、不満げに祖父は言うが、楓はこの缶ごと今夜、『主と呼ばれる者』と対峙することになっているから、持っていくと言った。

「なんじゃと!そんな話聞いておらんぞ!楓」

「そりゃそうよ……。昨日の夜に言われたんだもの。返ってきたときおじいちゃん、寝ていたでしょ! 」

と、楓は切り替えした。

うぐっ……と息を呑みながら祖父は

「まぁ、よい……。今夜じゃな? 」

うんと頷いたあと、続けて違うことを楓は祖父に聞いた。