午後の授業が始まる予鈴が鳴った。
楓と雅人は、
「今夜23時30分に、この屋上に」
と、約束してそれぞれの教室に戻った。
楓は早く今日の授業が終わるのを待っていた。
しかし、五限目の休み時間に校内放送で職員室に呼び出されたのだ。
職員室へ行くと、呼び出したのは担任の佐伯先生と、家庭科の黒須先生だった。
佐伯先生の話は、病院へ行ったかということなので、まだ行っていないことを伝えると、少し呆れたように
「さっさと行け!」と、お咎めだった。
こんなことなら、さっきの昼休みの時間に雅人に頼めばよかったと楓は後悔した。
雅人の家は病院を経営しており、検査が行われたのは藤原総合病院だったのだ。
まだ高校生の雅人に診断書を偽造なんてことはできなくても、雅人の兄と父親に頼めば何とかなったかもしれなかったのだ。
病院に行かなかった楓は、自業自得だから仕方ないとあきらめ、早めに病院に行くとだけ伝えた。
問題は黒須先生の方だった。
「ちょっと被服室に来てくれる? 」
ということで、一緒に被服室について行った。
「水ノ宮さんにはいつもお世話になってるんだけど……。
――実はね、この缶に入ってるのなんだか知ってるわよね?
この間から開かなくて困ってるのよ」
とのことだった。
開かなくて当然なのは楓が一番よく知っている。
「あの、いつから開かないんですか? 」
まさか自分が封印し、誰にも開けることができないようにしたなんていえるわけもなく、事の時系列を聞くことにした。
「昨日、生徒が使わない針を入れようとしたんだけど、開かないというから、先生が代わりに開けようとしたんだけど、ビクともしなくて……。水ノ宮さんの所で毎年お願いしてるでしょう?
――まだ2か月先だけど……。どうしようかと思って……」
持ち帰るチャンスでもあった。
「それなら、私が持ち帰って、うちで預かります。それでまだ2か月の間に、増えるかもしれませんから、別のに入れておけばいいかと思うんですけど……」
「でも、蓋、開かないのよ? それでも預かってくれるの? 」
「あっ、はい。これは元々うちの神社で毎年行ってる行事ですし、それまでに開けばいいことですし……」
「……そうねぇ。それまでに開けばいいけど。
ねぇ、もし開かなかった場合はどうするのかしら? 」
「それは……多分おじいちゃんが何とかしてくれると思うので、心配はないと思いますけど……」
「そう……。なんか迷惑かけちゃうわね。でも、お願いできるかしら? 」
「はい。それは私は全然かまいませんので……。授業が終わった放課後に取りに来てもいいですか? 」
「ええ、いいわよ。そうしてくれる方が助かるわ。
あっ、でも、持っていく前に先生に声、かけてね。
一応、あんなことがあったから……。まだ被服室に生徒を一人置いとくわけには行かないから……」
コクリと頷き
「わかりました。それじゃ、放課後、職員室で先生に声かけてから取りに来ます」
「うん、そうしてくれると助かるわ。ごめんなさいね。もう授業始まってるのに……。後で先生から、担当教科の先生に一言言っておくから。お願いね」
「はい。わかりました。この箱のことだけですよね? 先生」
「ええ、そうよ。それじゃ放課後にお願いね」
「はい。それじゃ、失礼します」
被服室を出て、急いで教室に戻った。6限目の授業は始まっており、『遅刻』という扱いにされ授業を受けた。
授業が終わりホームルームも終わって、楓は急いで再び職員室に向かい黒須先生を迎えに行った。
鍵を開けてもらい、ロッカーから封印を施した缶を取出し、家に持って帰ることがやっとできたのだ。
祖父に缶の中のことを話し、今夜、この缶ごと持って行こうかとも思案していた。
楓と雅人は、
「今夜23時30分に、この屋上に」
と、約束してそれぞれの教室に戻った。
楓は早く今日の授業が終わるのを待っていた。
しかし、五限目の休み時間に校内放送で職員室に呼び出されたのだ。
職員室へ行くと、呼び出したのは担任の佐伯先生と、家庭科の黒須先生だった。
佐伯先生の話は、病院へ行ったかということなので、まだ行っていないことを伝えると、少し呆れたように
「さっさと行け!」と、お咎めだった。
こんなことなら、さっきの昼休みの時間に雅人に頼めばよかったと楓は後悔した。
雅人の家は病院を経営しており、検査が行われたのは藤原総合病院だったのだ。
まだ高校生の雅人に診断書を偽造なんてことはできなくても、雅人の兄と父親に頼めば何とかなったかもしれなかったのだ。
病院に行かなかった楓は、自業自得だから仕方ないとあきらめ、早めに病院に行くとだけ伝えた。
問題は黒須先生の方だった。
「ちょっと被服室に来てくれる? 」
ということで、一緒に被服室について行った。
「水ノ宮さんにはいつもお世話になってるんだけど……。
――実はね、この缶に入ってるのなんだか知ってるわよね?
この間から開かなくて困ってるのよ」
とのことだった。
開かなくて当然なのは楓が一番よく知っている。
「あの、いつから開かないんですか? 」
まさか自分が封印し、誰にも開けることができないようにしたなんていえるわけもなく、事の時系列を聞くことにした。
「昨日、生徒が使わない針を入れようとしたんだけど、開かないというから、先生が代わりに開けようとしたんだけど、ビクともしなくて……。水ノ宮さんの所で毎年お願いしてるでしょう?
――まだ2か月先だけど……。どうしようかと思って……」
持ち帰るチャンスでもあった。
「それなら、私が持ち帰って、うちで預かります。それでまだ2か月の間に、増えるかもしれませんから、別のに入れておけばいいかと思うんですけど……」
「でも、蓋、開かないのよ? それでも預かってくれるの? 」
「あっ、はい。これは元々うちの神社で毎年行ってる行事ですし、それまでに開けばいいことですし……」
「……そうねぇ。それまでに開けばいいけど。
ねぇ、もし開かなかった場合はどうするのかしら? 」
「それは……多分おじいちゃんが何とかしてくれると思うので、心配はないと思いますけど……」
「そう……。なんか迷惑かけちゃうわね。でも、お願いできるかしら? 」
「はい。それは私は全然かまいませんので……。授業が終わった放課後に取りに来てもいいですか? 」
「ええ、いいわよ。そうしてくれる方が助かるわ。
あっ、でも、持っていく前に先生に声、かけてね。
一応、あんなことがあったから……。まだ被服室に生徒を一人置いとくわけには行かないから……」
コクリと頷き
「わかりました。それじゃ、放課後、職員室で先生に声かけてから取りに来ます」
「うん、そうしてくれると助かるわ。ごめんなさいね。もう授業始まってるのに……。後で先生から、担当教科の先生に一言言っておくから。お願いね」
「はい。わかりました。この箱のことだけですよね? 先生」
「ええ、そうよ。それじゃ放課後にお願いね」
「はい。それじゃ、失礼します」
被服室を出て、急いで教室に戻った。6限目の授業は始まっており、『遅刻』という扱いにされ授業を受けた。
授業が終わりホームルームも終わって、楓は急いで再び職員室に向かい黒須先生を迎えに行った。
鍵を開けてもらい、ロッカーから封印を施した缶を取出し、家に持って帰ることがやっとできたのだ。
祖父に缶の中のことを話し、今夜、この缶ごと持って行こうかとも思案していた。

