水ノ宮の陰陽師と巫女

佳織の家に着いて、中に上がった。

「お邪魔します……」

「昼間誰もいないんだ。遠慮しないで!」

通されたのはリビングだった。キッチンの方から飲み物を持って佳織はソファに座り、運んできたオレンジジュースをテーブルに置いた。

佳織の両親は共働きで、二人とも帰ってくるのは午後9時過ぎになるらしい。一人で晩御飯を食べるらしい。そのため好きなものを食べれるように、毎朝キッチンテーブルには、お金を置いてあり、それで夜、一人何かを買ってきて食べているとのことだった。

楓は佳織が一人でご飯食べてるのは少しさみしい感じはしたが、それよりも今すぐやらなければならないのは

「うん……。それより佳織の部屋に行こう。おじいちゃんの符、張り直さないと」

くつろいでいる時間は、ない。佳織の血を欲しがるというあの≪操り針子≫を倒すまでの日数もこちらにもあまりないのだから。

「あ、うん、こっち。あたしの部屋、二階なんだ」

と、腰を上げ、佳織は二階の自室へと案内してくれた。

部屋のドアを開けると、4つの角に貼られていたはずの結界霊符の神気すら、この部屋にはない。

「ねえ、佳織。もしかして寝ている時、その女が現れた?でいいんだよね?」

結界が破られたのは午前二時。普通なら寝ているはずの時間帯であり、邪気が残っているのは窓にそばに添えてあるベッドの上。確認するように、訊ねた。

「う、うん。寝ていたら、急に何か割れる音がして目を覚ましたらベッドの上に……。私の上に乗っかる様にいたの!」

両のひじを抱えるように、あの時の恐怖を思い出し寒気を堪えるように佳織は話した。


「そう……。
――それじゃ、これから結界霊符貼るから。
――悪いんだけど佳織、部屋出ててくれる?」


「えっ?貼るだけじゃないの。符を……」

「ン?そうだけど、ちょっとね……。見られたくないって言うか……」

軽くはははっと笑うように言いながら、後ろにいる佳織の顔を見ることもなく、楓は答えた。

「うん……。楓に任せるね。
――それじゃ、部屋出てるから、何かあったら教えて……ね」

楓はくるりと振り返り、うんと頷き、それを確認した佳織は肩をすくめて部屋を出た。