水ノ宮の陰陽師と巫女

食事を終えた後、雅人は祖父、春治に頼まれた通り、今夜も佳織の家に行くことになっている。

それを知った楓は、自分も行くと言ったが、祖父と父、そして雅人に止められた。一日寝込んだとはいえ、身体が動かないわけではない。
だが、楓を狙う者がいる以上、今起き上がって食事をしたばかりの楓を外に出すのは危険すぎるという、判断からだった。

それでもなお、楓は食い下がった。自分の失態から来るものだからと……。

「今夜は僕が行くから。楓、頼むから今夜は休んでくれないか」

と、雅人からの願いを聞き入れないわけにはいかず、仕方なく楓は今夜、佳織の家に現れるはずの≪操り針子≫を対峙しに行くのをあきらめた。

雅人を玄関まで送り

「絶対にケガとかしないでよね！」

と、楓は横を向きながら心配そうに言った。

「大丈夫！春治おじいさんにも言われてるから。『深追いはするな』ってね」

その言葉を聞いて安心した楓は、コクリと頷き、気をつけてと一言言い、雅人を見送った。