水ノ宮の陰陽師と巫女

翌日も楓は休みだった。

被服室にある、楓が封印した缶の箱を雅人は持ち出すかどうするか、悩んでいた。

春治の話では、『用心の為』と言っていたが、楓がこんなに強力な僕でも解除できない封印を施すことはない。
今は持ち出そうとすると誰かが必ずや、妨害が入るこの現状では持ち出すにも持ち出せない。ここは、楓が戻るまで待つことにするか……。

一応教室内は見回したが、邪気を感じるものもなく、逆に楓の神気に満ち溢れて、妖などが入り込めるような状態ではないほど清らかな空間に被服室の気は変わっている。

あとは……。湯原佳織の方だ。

先に校門の方へ向かい、佳織が来るのを待っていた。

校門に近づくと

「あっ!」という声で振り向くとそこには佳織と、もう一人の女子生徒がいた。

「こんにちは。楓の幼馴染さん」

と、雅人にぺこりと頭を下げた佳織に

「こんにちは。まぁ、間違いではないんだけど……。僕は藤原って言うんだよ」

と、雅人は訂正を求めるように自分の名を告げた。

佳織は、何か気まずいような感じで小声で

「あの……。今日も家まで護衛なんですか? 」

「そうだけど。なんかまずいの? 」

チラリと佳織がもう一人の一緒にいる子の方に視線を配り、なるほどと、納得した。

「そういうことか……。それじゃ、わかった。何かあったら、連絡だけはするようにね」

と、声をかけて、佳織を校門から見送った。

さてと……。

雅人は佳織とは反対方向へ歩き、路地へと入り込み、塀から屋根の上へと飛び移って、佳織の後をつけた。

無事に佳織ともう一人の女子生徒が佳織の家に着いたのを確認し、踵を返した。