水ノ宮の陰陽師と巫女

「貴様はぁぁぁ!」

甲高い怒りの声を上げる操り針子は、雅人の元へ一直線に飛び向かった。

瞬間、のけ反る様に後ろへ一歩大きくジャンプし、操り針子の突進をかわした。

「貴様の結界か!今すぐあの結界を解け!」

苛立ちを隠すこともなく、大きな声で叫びまくる。

「生憎……。あの結界は僕が張ったものじゃないんでね」

そう言いながら、雅人は懐から一枚の符を取出し構えた。

その姿を見た操り針子は、

「やめろ……。やめろ!」

一歩後ずさりし呻くように操り針子は言った。

昨日のように、封印されたらまたあのお方に怒られる。子供のように首を横に振りながら、一歩また一歩と下がっていく。

「あぁぁ……嫌だ……。その符は嫌だ……。昨日の小娘と一緒にいたお前も嫌だ……。」

後ろに下がりながら、首を横に振りつつ、自分の両の髪を両手でつかみ、

「お前らのようなのがいるから悪いんだ!お前らがいなければいいんだ!そうすれば主様に献上できるのだ。だからお前らを殺す!」

頭を振り乱すように振り回し、髪の毛が細く短いものに代わり、雅人を目がけて幾つも飛んできた。

すかさず持っていた符を前に差出し

「我を守りし陣 結界」

と、唱えた瞬間、符は透明な箱のような状態になり、雅人を覆い尽くした。

結界にあたる、操り針子の髪は、キィンキィンと音をたてて落ちてゆく。

切印を組んだまま、自分の身を守る結界を支えた。

荒れ狂うように髪を振り乱す操り針子の動きは止まらない。

その時だった。

「あんた!またなに無駄なことしてんの!」