「ピンポーン」インターホンを鳴らし、玄関の引き戸を開けた。
「こんにちはー!」
出迎えたのは、楓の父、真志だ。
「やぁ、雅人君。さぁ入って」
「はい。お邪魔します。あの、春治おじいさんは?」
玄関で靴を脱ぎながら、春治の在宅を確かめた。
「おじいさんなら、居間にいるかな?ちょっと待っててね」
いつも朗らかに優しく話してくれる真志のことは雅人は好きだった。
自分の父もこんな風に優しく声をかけてくれる親ならと、常々思っていた。
少し経って真志は居間に楓の祖父がいることを伝え、雅人は楓の様子を聞いてから、居間へと案内された。
「お父さん、雅人君が来ましたよ」
「うむ。入りなさい」
真志の「さぁどうぞ」と手を部屋に出したのを見、一礼をしてから、部屋へ入り、座った。
「で、どうじゃった?」
「はい。学園内を調べてきました。気になることがあります。」
視線を雅人に向けたまま、話を続けるように春治は無言を続けていた。
「教室内のあるものに、楓が封印したものがありました。持ってこようと思ったのですが、昨日のことがあり、持ち出せませんでしたが……。昨日のことは、話を『湯原佳織』から、聞きだしました。ただ……。」
学園には結界が張られている。それはいつからなのかはわからない。だが、はっきりしているのは、妖、物の怪、霊などは学園内に入り込む余地はないはずなのだ。
このことは春治も知っていることである。
それなのに、学園の中の教室に妖が現れた。それも異空間を作れるほどのもの。中位クラスの妖だ。
そして楓を襲った者……。
瞼をつむりながら聞いていた春治は
「ふぅむ」と一呼吸置き、話した。
「どこかの結界が弱まったかほころびができたのかもしれぬな……」
と一言独り言のように春治はつぶやいた。
「結界が弱まったりほころびができれば、中位クラスの妖などは多少の痛みがあったとしても入ることができる。じゃが……その弱った部分の結界の場所じゃ」
雅人は春治の話を黙って聞き入り頷いた。
「楓が封印したものは使われなくなった道具ですが……」
「あれはな、楓が一応施したものじゃ。おおかた操り針子に使われんようにと用心のために封印したのじゃろう」
「そうですか……」
「あやつは用心に越したことはない子だからのぉ。早く熱が下がればいいのじゃが」
楓の負った傷には毒が仕込まれたものによるものだった。解毒の治療はもちろんのこと、傷口の消毒などもしてある。なのに、発熱を未だ続いている。
雅人は楓のケガの話になると、少し肩をすくめながらうつむいてしまった。
「僕のせいだ……。僕が早く着いていれば……」
何度となく胸の中で押し寄せる後悔の波に押しつぶされそうになる。両の掌の握った拳を膝に置き
凛とした目で、春治に
「お願いがあります。今回の件、僕に一任させていただけませんか!お願いします!」
目を丸くした春治は
「水ノ宮家は代々藤原家に仕えし巫女の一族ではあるが……。今回の件は楓にも責任はある。それに、わしも少し関わっておるからのぉ……」
あごひげをなでながら、ほっほっほと、軽やかに笑うように春治は言った。
「じゃが、頼むぞ。雅人君、楓が治ってもあの妖を二人で退治してくれることを、わしは望む。二人が成長した証を見せてくれんかの?」
下げていた頭を上げ、春治の顔を見た雅人は
『許可が下りた!』ことに安心し、
「ありがとうございます」
と、一礼をした。
そして楓が行っていたことを春治から聞き、今夜再び佳織の家に向かうことにし、水ノ宮家を後にした。
「こんにちはー!」
出迎えたのは、楓の父、真志だ。
「やぁ、雅人君。さぁ入って」
「はい。お邪魔します。あの、春治おじいさんは?」
玄関で靴を脱ぎながら、春治の在宅を確かめた。
「おじいさんなら、居間にいるかな?ちょっと待っててね」
いつも朗らかに優しく話してくれる真志のことは雅人は好きだった。
自分の父もこんな風に優しく声をかけてくれる親ならと、常々思っていた。
少し経って真志は居間に楓の祖父がいることを伝え、雅人は楓の様子を聞いてから、居間へと案内された。
「お父さん、雅人君が来ましたよ」
「うむ。入りなさい」
真志の「さぁどうぞ」と手を部屋に出したのを見、一礼をしてから、部屋へ入り、座った。
「で、どうじゃった?」
「はい。学園内を調べてきました。気になることがあります。」
視線を雅人に向けたまま、話を続けるように春治は無言を続けていた。
「教室内のあるものに、楓が封印したものがありました。持ってこようと思ったのですが、昨日のことがあり、持ち出せませんでしたが……。昨日のことは、話を『湯原佳織』から、聞きだしました。ただ……。」
学園には結界が張られている。それはいつからなのかはわからない。だが、はっきりしているのは、妖、物の怪、霊などは学園内に入り込む余地はないはずなのだ。
このことは春治も知っていることである。
それなのに、学園の中の教室に妖が現れた。それも異空間を作れるほどのもの。中位クラスの妖だ。
そして楓を襲った者……。
瞼をつむりながら聞いていた春治は
「ふぅむ」と一呼吸置き、話した。
「どこかの結界が弱まったかほころびができたのかもしれぬな……」
と一言独り言のように春治はつぶやいた。
「結界が弱まったりほころびができれば、中位クラスの妖などは多少の痛みがあったとしても入ることができる。じゃが……その弱った部分の結界の場所じゃ」
雅人は春治の話を黙って聞き入り頷いた。
「楓が封印したものは使われなくなった道具ですが……」
「あれはな、楓が一応施したものじゃ。おおかた操り針子に使われんようにと用心のために封印したのじゃろう」
「そうですか……」
「あやつは用心に越したことはない子だからのぉ。早く熱が下がればいいのじゃが」
楓の負った傷には毒が仕込まれたものによるものだった。解毒の治療はもちろんのこと、傷口の消毒などもしてある。なのに、発熱を未だ続いている。
雅人は楓のケガの話になると、少し肩をすくめながらうつむいてしまった。
「僕のせいだ……。僕が早く着いていれば……」
何度となく胸の中で押し寄せる後悔の波に押しつぶされそうになる。両の掌の握った拳を膝に置き
凛とした目で、春治に
「お願いがあります。今回の件、僕に一任させていただけませんか!お願いします!」
目を丸くした春治は
「水ノ宮家は代々藤原家に仕えし巫女の一族ではあるが……。今回の件は楓にも責任はある。それに、わしも少し関わっておるからのぉ……」
あごひげをなでながら、ほっほっほと、軽やかに笑うように春治は言った。
「じゃが、頼むぞ。雅人君、楓が治ってもあの妖を二人で退治してくれることを、わしは望む。二人が成長した証を見せてくれんかの?」
下げていた頭を上げ、春治の顔を見た雅人は
『許可が下りた!』ことに安心し、
「ありがとうございます」
と、一礼をした。
そして楓が行っていたことを春治から聞き、今夜再び佳織の家に向かうことにし、水ノ宮家を後にした。

