水ノ宮の陰陽師と巫女

校門を二人で出て、先に言葉を発したのは佳織だった。

「楓は……?あの、その前に、あなたは楓となんですか?」

「ん?幼馴染だけど。何か?」

と、軽やかに楓との関係を雅人は答えた。

教室でパニくって楓のことを聞いたことを佳織は雅人に謝罪し、改めて楓のことを聞いた。

「うん、昨日境内の掃除してて、怪我したらしくて。その傷口から菌が入ったらしくてね……。発熱したらしいとは聞いてるけど、すぐ治るよ。あいつ、結構丈夫だから」

はははと笑うように説明した。本当のケガの理由なんて言えるはずもないのだが、この子をこれ以上恐怖に怯えさせるわけにはいかないと判断した嘘だった。

それを訊いた佳織は、ほんの少しだが安堵の表情を見せた。

それは今日の病院での事があったからだ。

楓が休んだことで、昨日の事件で、記憶がない者は、何か不吉なことが起こるんじゃないか?その一番先になったのが楓なんじゃないかと、女子の中では勝手に噂のようになり、次は自分じゃないかと、怯え始めていたのだった。

その話を聞くと、

「大丈夫だよ。楓は小さい頃からおっちょこちょいで、よく転んでケガしてたからなぁ……。
――ところで話ってのは、その時のことなんだけど、少し詳しく聞かせてくれると助かるんだけど」

子供の頃を思い出すような遠い視線で話したあと、少し重さのある言い方をした。

コクリと頷き、佳織は話した。

「いきなりだったんです。銀色の髪の女が現れて、教室内を歩き回って……。楓の近くに来て離れた瞬間、突然みんないなくなって……。教室に残ったのは私ともう一人いて。心臓が止まるかと思いました。みんなどこに行ったのかわからなくて、一瞬で消えて。それで、いきなり現れて。でもみんな倒れていて……」

最後の方はか細く今にも泣きそうな声で、昨日のことを佳織が話してくれた。

少し黙って、深く息を吐いた後、雅人は

「そっかぁ……。そんな変なことが起きてたんだ……。」

大体は、今の話で想像がついた。