水ノ宮の陰陽師と巫女

昼休みになり、早々と昼食を済ませ、家庭科室へと向かった。

昨日は「立ち入り禁止」の張り紙はしていたが、今日は通常に授業は行われていたが、被服の授業はどの学年どのクラスもないため、張り紙ははがされていた。

被服室の扉を開け、中に入ってみると、全てはきれいに片づけられていた。

雅人は教室にさらに一歩踏み込み、隅々まで見回した。

そして……。

楓の持つ気を探し、昨日いた場所を見つけた。

窓側の後ろの方の大きな机の内側の前の方の席。ここに楓本来が持って発している神気を感じ取り、辺りを見回した。

だが、床や壁を見ても何もおかしなものはない。

糸くず一つすら落ちていないのだ。

「ここにあの妖が異空間を作ったというのか……」

くるりと椅子を回転させ、さらに後ろの方を見た瞬間、回っている椅子を足で止め、一つのロッカーに視線が映った。

楓の神気を感じた場所にと歩を進めた。

「この中から……?」

その場所は、もう使われなくなった道具がしまわれているロッカーだ。この中に何があるというんだ……?

訝しげにそっとロッカーを開けた。

カチャッと音をたて、中をうかがうように見ると、普通の人間には見えないが、封印の符を貼った缶の箱があった。

それが楓の神気を発していたものなのはすぐさまわかった。

が、これを封印した意味が分からなかった。

確かに襲ってきているのは、≪操り針子≫ではあるが、使われなくなった針が原因であのような妖怪が、出てくるはずがない。それは、雅人も楓も、わかっていることだ。

しかしなぜ、楓がこの針を封印したのか。
使われる恐れがあるからという理由なのか、というのまでは雅人にはわからない。

封印を施したということは、家に持って帰ろうとしたことには間違いないだろうと、思い、手にした封印した缶を元に戻し、帰りに取りに来ることにした。

楓が少しでも話せる状態ならば、理由はわかるだろうと判断して……。