水ノ宮の陰陽師と巫女

翌日、ホームルームが終わって1限目が始まる前に楓の教室に雅人は向かった。

1年3組……。ここが森里学園高等部の楓の教室だ。

扉は開いており、廊下に近い席の男子が何人か話をしていた。

「ちょっといいかな?」

扉に近い男子生徒に声をかけた。

「水ノ宮楓と湯原佳織さん、いる?」

雅人の方を振り向く数人の男子生徒が、頷きながら答えた。

「いえ、今日女子は、午前中病院で検査で、俺たち男子だけ自習なんすよ」

「えっ!そうなの? それじゃ、午後に改めてくるよ。ありがとう」

そう言って雅人は楓のクラスから自分の教室へと戻った。

聞いてないぞ……。病院で検査だなんて。家庭科の授業で何かあったのは聞いはいたが、病院に行くほどのことが起きたのか?

――否、楓が起こしたのか……? あの妖と教室内で戦ったとしたら……。

つらつらと頭の中で考えながら教室に戻り、午前中の授業を受けた。

だが、事がわからないので、どの教科も先生の声は雅人の耳には届いていなかった。

ただ……。家庭科の教室を調べる必要がある。あそこで何が起きたのかを……。と、それだけに雅人の思考と心理が働いていたのだった。