後ろから符が飛んできているのに気づいていないのを確認しながら、楓は、腰に装備してきているくないを右手の指に3本、左手の指に2本取出した。

「そんなもので、何をしようとしてるのだ?小娘」

楓は答えずに無言で口元だけで「ふっ」と笑うように、右手のくないを、操り針子に向けて投げつけた。続いて左手の二本のくないも投げつけた。

5本のくないは、操り針子を囲むように地面にささった。

先に放った符は、操り針子の背にピタリと張り付き、耐え難い苦しみの断末魔の叫びが公園内に響き渡った。

楓はすぐさま切印を組み、5本のくないを一つに結ぶように五芒星を空に描き、

「結界!」

と叫んだ瞬間、5本のくないが星形に結び円陣ができ、操り針子を捕えた。

地面から空に向かって黄色みを帯びた光がカーテンのように操り針子を円陣の中に閉じ込める。

切印のまま、楓は結界に封じた操り針子へと歩みを寄せた。

「あの方って誰?」

結界の中で苦しむ声で

「し、知らぬ!そ、そんなやつ!」

「私をあの方へと言ったのに、知らないのか……」

うつむきながら聞いていた楓は、顔を上げ鋭い目で操り針子を見据えた。

「わ、わかった。我がひとっ走り行って、聞いてこよう。と、と、取引しよう……」

「知らないならいいわ。あんたにもう用はない」

冷たい氷のような両眼を開いた瞬間。


――ずさっ!

と、森の奥から足音が聞えた。

視線を向けるとそこには黒い人影のようなのが立っていた。