水ノ宮の陰陽師と巫女

神殿内に入ると、円座に座った佳織が心細いといわんばかりの子犬のような目でこちらを見る。

大丈夫だからというように楓はニッコリ笑って返した。

祖父はまだ来ていない。

その間に、人形代や霊符、玉串、幣を用意し始めた。

人形代は必要は多分ないだろうけど、毎夜現れるというあの女の邪気が体にまとわりつけば厄介なことになる。祖父のお祓いであれば、人形代は別に必要ないと言えばないのだが……。

まぁ使わなくても用意だけはしておこうと、それぞれを準備し終わり、2分ほどで、祖父は神殿に入ってきた。

白の狩衣を身に纏い烏帽子をかぶって。

佳織の前にある円座に座った。

「あ、あ、あの……よろしくお願いします」

緊張した気持ちを絞り出すように、佳織は声にした。

「はい。こんにちは。大変な目にあってると聞いたが、わしに話してくれるかのぉ?」

「あ、は、は、はい……。あの、学園祭が終わった日から変なのが毎晩出てきて。あ、でも、その日、楓から針を使わない方がいいって言われてたのに使っちゃって、あの、その……」

緊張からくる言葉の支離滅裂さ。

祖父が見かねて、楓の方を見、頷いた。

はぁぁとため息をつき、神殿を一度出て父の元へ行き、お茶を持って戻ってきた。

祖父、佳織、自分と配り、佳織のそばに座って

「まぁ、お茶でも飲んでおちつきなさい」

という祖父の言葉通り佳織は湯呑に手を出し持ち上げ口へと運んだ。