水ノ宮の陰陽師と巫女

――水ノ宮神社

400年以上も続く由緒正しい神社(多分)に楓は生まれた。

陰陽師とその陰陽師を支えし巫女が守り続けてきた神社と、楓は祖母から聞いている。ご先祖様が大事に大事に守り続けてきたみんなの安穏の生活を守るために……と、小さい頃よく聞かされていた。

だから、この家に生まれる者は代々、男子は陰陽の業を巫女は結界術にたけていた。物の怪や妖、雑鬼などは封じるか、対峙して滅する力が大きい。故に霊力も人よりもある。見える程度では、物の怪などと戦うにも戦えるわけはない。その術を代々受け継がれ、この土地を守る神と共に、私も存在している。

と、いうことになる。

二人は鳥居の前まで来て、一度立ち止まり一礼をしてから鳥居をくぐった。

広々とした境内の左右には手水がある。

楓は毎日家に帰るとこの儀式を行う。

柄杓に水をくみ、左手、右手を洗い左手に水を注ぎ口を漱ぐ。

佳織は楓の真似をして、同じように手水を行った。

そして拝殿の前を横切って家に行くため、拝殿の前で一礼をしてから左側にある自宅へと佳織と共に入って行った。

「ただいまー!」

パタパタと軽快な足音を立てながら父が出迎えてくれた。

「おかえり、楓。そちらの方が楓のお友達かい?」

「はい。湯原佳織と言います。今日は突然、あの、お邪魔して。いえ、あのお願いしてしまって……」

緊張してしどろもどろになった佳織を見た父は、

「大変だったんだね。さあ、上がって。楓は着替えて準備するようにね。お父さんはお友達を先に連れて行ってもいいかな?」

「あ、うん。それじゃ……お父さんに頼んでもいい?着替えてすぐ行くから」

「え?」と目を真ん丸にして佳織は楓の方を見た。

「ン?佳織、どうしたの?」

「えっ、あ……。うん。楓も一緒に行ってくれるのかなって思ってて……。さっき歩いた時に話したことも……」

うつむきながら心配そうに言う佳織に

「あとでちゃんと、佳織のそばにいるから。着替えてくるだけだし。大丈夫だから……ね。あ、それとさっきここまで来る時の話はおじいちゃん、多分聞くと思うから、また話してね。
――それじゃ、お父さん、お願いします」

と、頭を下げて佳織を父に任せ部屋へと向かった。