水ノ宮の陰陽師と巫女

私は佳織と真理の二人が異界に引き込まれなかったことで、三人で一緒に帰ってもいいと思っていた。

――しかし佳織は私にだけ話したかったようだ。

終始うつむいている佳織に、

「佳織、話って何……?」

と、問うた。

「うん……。できれば楓と二人の方が良かったんだけど。あの時、真理も一緒だったんだ。みんなが消えた時」

「さっき、真理に怒られちゃったよ。ごめんね、心配かけて」

「ううん。真理がいてくれたから私は平気だったから大丈夫だったし、それにみんな戻ってきたから。あ、そういえば楓も明日病院だよね? 」

「ン? そうだけど……」

佳織が話したいこと、別の話のようだ。真理がいるから話せないのかと悟っていると

「あの変なもの、見えていたんでしょ? 佳織には」

真理が口を開いた。

「真理にも見えてたの? 」

驚いたように佳織も続けて言った。

コクリと頷く真理。

――この二人あの女が見えていたのに、あの異界に引き込まれなかったということ? あの女、なぜ……。という疑問しか残らなかった。

「でもみんな無事でよかったよね。真理」

「うん……
――佳織、楓に話あるんでしょ? 私、先帰るから。明日また学校で! 」

手を振りながらとっとっとと真理は駆け出して帰って行った。

「なんか真理に悪いことしちゃったなぁ。楓と話すのに……」

無言のまま心の中で、そうだね。と言いながら楓は頷いていた。