水ノ宮の陰陽師と巫女

佳織を待たせているため、被服室へ急いで行き、教室内に入るとそこには先客がいた。

「ねぇ、楓。あなたたちどこに行ってたの?授業中に。それも先生やほかの子たちも一緒に」

真理だった。

「えっ?なに?私何も知らないけど……。な、なんかあったの?」

「嘘!じゃぁ、なんで楓だけ意識があって他の子たちが意識なかったのよ!どこで何をしてたのよ!」

まずい……。隠し通さなければならない。妖と戦っていたなんて、その妖に他の子たちが操られていたなんて、言えるはずもない。何とかごまかさないと。

「いやぁ……。どこに行ってたかって言われても、覚えてないのよね。ホント。何がどうなって、みんな倒れてたのを見てびっくりしてさぁ……」

嫌な汗が手のひらから滲み出てきそうだ。心臓の鼓動も少し早くなり始めていた。真理の目が私から離れそうにもないが、ここは病院へ行くという明日のこともあるし……。記憶がないことにして通しきるしかなかった。

「本当に何も覚えてないの?何も見てないの?楓は」

心なしか少し静かな声で、真理が問いただしてきた。

「うん……。なんか、よくわかんないんだよね。いきなり気づいたら、みんな倒れていて何があったのか。保健室にも行かされて。ごめん。真理、本当に何があったのかわからないの」

しばしの間、二人の中で沈黙が続いた。

「そう……。心配したんだからね!いきなりみんな消えちゃうし。教室の中には、私と佳織だけになっちゃうし!でもみんな無事でよかったぁ」

少し涙が出そうな目をうるうるさせながら少し怒った顔で私を見ていた。

「本当にごめんね。心配かけて。」

フルフルと首を振りながら

「それじゃ、帰ろう!」

真理と二人で教室を出て校門に向かった。

「佳織ー!待たせてごめん」

校門の前に一人携帯を持ちながら待っていた佳織と一緒に三人で歩き始めた。