とうとう、家庭科、被服の授業の日が来た。

教室には6人ほどが作業ができる大きな机が、4つある。

黒板はないが、ホワイトボードや、電子黒板を使って授業を受ける。

後ろの方には、ロッカーがあり、そこには各々の裁縫道具や、授業に使われる布などがしまわれている。

その中から、今日の授業の用意をし、グループに分かれて席に着いた。

日直の声で、みんなが起立した。

「礼……着席」

席に座ろうと、黒須先生の方を見た瞬間、私は慄然した。

まさに、あの日……、橋の上で微かに笑みを浮かべ川へと消えて行った者がそこにいたのだ。

銀色の髪、ふわりとしたように見えた服は、白い着物に、羽織りを羽織っていたからだった。

銀色に光る髪は、腰よりも長く、顔はうつむいているため髪で隠れ気味になりはっきりとは見えない。

だが、口元だけは見える。

薄らと微笑んでいるかのような唇。

その女は、黒須先生にピタリと寄り添うように動いている。

しかし、周りの生徒は気づいていない。

……やはり霊体？まさか妖？

霊体や妖は、普通一般人には見えてはいない。

先生も霊が今、あなたの隣に寄り添って、一緒に動いているなどとは、全く気付いていないだろう。

と、頭で考えながら、ふと右の後ろをふと振り向いていた。

そこには、佳織が青ざめたような顔で、先生の方を見ていた。

「まさか……。見えているはずは、ないはずだけど……。あの青ざめたような顔は……」

訝しげに佳織を見ていたが、そんなことよりもあの女だ。

何の為に、先生に着いている？何の為にこの教室にいる？何の為に……。