吐き出した煙が宙に舞うのを見つめているが焦点は合っていない。

目覚まし時計は寸分の狂いなく秒針が音立てながら動いているが、
目が醒めたばかりの男はこの部屋の中で時間の経過が緩やかの様だ。

タバコの煙をゆっくり吸っては吐いて、吸っては吐いての繰り返し。

じわじわと火のついたタバコの表面積が灰に姿を変えていく。

重力に逆らうことができなくなった灰が下に落ちていくが男は気が付かない。

男の表情は何かを考えてる風で、時折タバコを持っていない方の手で髪をかき分ける仕草を見せる。

何を考えているのかは本人しか分からない事であるが、ふとタバコの灰が下に落ちたことに気が付いてそれを探す。

その答えはテーブルの隅にあり、男はタバコをくわえてテーブル横にあるティッシュを取り出して灰を崩さないように拭き取った。

そして男はまたぼんやりとした表情で吐いた煙が宙に舞うのを眺めていた。