でも顔を上げれば、きっとものすごい至
近距離に皐君の顔があるんだと思う。
「……顔、あげなよ」
「む、無理です……っ!」
ぎゅう、と皐君のセーターの腰辺りを掴
んでそう言うと、クスッと皐君が笑う。
それから、私の耳の形をなぞるように撫
でてきたから大袈裟に身体が揺れた。
「……真っ赤」
「……っ、」
「可愛すぎだから、ほんと」
ふ、と皐君の吐息が、耳朶を掠めたかと
思えば。
───ぱくっ。
「ひゃあぁ!?」
いきなり、耳朶を食べられた。というよ
りは、唇で挟まれた、というのが正しい
のか。
とにかく、いきなり耳朶に皐君の唇が触
れられて、思わず逃げ出そうと身体を起
こそうとした。


