でももう逃げられないのはわかっていた
から、じ、と皐君を見つめた。
視線が絡むだけで、こんなにもドキドキ
して、苦しくて。
皐君が"好き"って気持ちが溢れて止まら
ないのに。
想いが溢れれば溢れるほど、脳裏にちら
つくのはあのキレイな女の人。
こんなに好きなのに。
好きでたまらないのに……きっと皐君に
は、届かないんだ。──なんて泣きそう
になっていたら。
不意に、皐君が私の腕を引っ張って、そ
のまま私を引き寄せた。
そのまま、ポスン、と皐君の胸に飛び込
む。
その温もりに、カアッと身体が熱くなっ
た。
「……杏子」
掠れた、皐君の声が聞こえてくる。
私が慌てて皐君の腕の中を抜け出そうと
すれば、逃がすまいとするように、腕に
力が込められた。


