半ばそう無理やり自分を納得させて、声 がした方は見ないようにしたのだけど。 「おい、杏子」 「っ、」 やっぱり、幻聴なんかじゃなく。 それは、私が避け続けていた声だった。 だから……だから思わず、私は。 「ごごご、ごめんなさいぃぃ~っ」 と奇声を発するように叫んで、その場か ら逃げ出してしまったの。 ───皐君から。 だってだって、顔なんて見れない。 あの日。 皐君の誤解を解いた日に、されたキスが 忘れられなくて。 どうしてキスしたの? そうききたいのに、聞けなくて。