甘く掠れた、皐君の声。
「……キス、してみる?」
たっぷりと妖艶さを含んだ笑みでそう言
う皐君に、ぷしゅーっと頭がオーバーヒ
ートを起こしてしまうんじゃないかと思
った。
聞いたこともない、皐君の声。
他の女の子にも、吉馬さんにさえ、こん
な柔らかい目をしてる所なんて見たこと
ないのに……。
「さ、最近の皐君……変だよぉ……」
恥ずかしくて、涙目になりながらそう皐
君を見上げると、皐君はムッとしたよう
に唇を引き結んで。
困ったように眉尻を下げながら、私の頬
をゆるゆると撫で、
「……杏子のせいだ」
そして、ポツリ、とそんな言葉を落とし
た。


