「ご、ごめん。聞こえなかった。もう一度言ってくれる?」 「……やっぱ何でもない」 「え!」 き、気になる! おろおろするわたしを見て躊躇しながら千葉君は小さな声で言った。 「――……さっきの、嬉しかった」 そう言うと千葉君は足早にすたすた去って行く。残されたわたしは『さっき?』と首を傾げる。 しかし記憶を振り返ると数分前の自分を恥じた。