東京行きを諦め、祖母と田舎で暮らすことを決めた母。
同時に三人の子供達を面倒を見ることも念頭においていた。
でもそれでは余計な負担がかかる。
そう思ったアイツの父親は、小学校入学前のアイツを連れて田舎を離れたのだった。
母が一緒に行かなかった本当の訳は、愛していなかったからではない。
子供を望まれても叶えてやれないからだった。
だから別れを切り出したのだった。
だから結婚しなかったのだった。
小さかった兄貴は、私を本当の兄弟だと信じて……
でもアイツは私がイトコだと知っていたのだ。
私は兄貴の言葉を思い出していた。
『知ってるか? あの人は俺達の兄弟なんだぞ』
兄貴は本当に知らなかったのだ。
私が二歳の時海難事故が起きた。
でも元々一緒に暮らしていたようなものだったらしい。
だから兄貴は本当の妹だと信じていたのだった。
私はそれを聞いても、そうなんだと思っていた。
だってアイツが初恋の人だなんて思いもしなかったんだから。
東京でアイツ暮らしていたマンション。
あのダイニングでふと垣間見た仕草にときめいた。
その時急によみがえってきたんだ。
田舎でアイツと暮らしたホームステイの日々が……
その笑顔が私の心を優しく包み込んだ日。
私はアイツに仄かな恋心を抱いた。
思い出と共に溢れ出した愛しさ。
でもそれは兄貴の発言で地獄へ向かう。
私は奈落の底でもがくしかなかったのだ。
姑の看病のために田舎に残った母。
祖母は一進一退を繰り返し数年後に亡くなった。
余命数ヶ月と宣告された時、母はアイツを呼び寄せたのだった。
やはり私とアイツは血の繋がりはなっかた。
いや本当はあるのかもしれない。
ただ本当の兄弟ではなかったと言うことだった。
「だから結婚出来るよ」
アイツが私の手を取り、ゆっくり絡めて握り込む。
小さな私の指が大きなアイツの掌に包みまれた。
「実は……、みさとは俺の初恋の人だったんだ」
母の目を盗んで、アイツは私の耳元で囁いた。
「あのホームステイの時、俺は恥ずかしそうに俯くみさとに恋をしたんだ。どうしようもないくらいときめいたんだ」
アイツは目をキラキラさせながら私を見つめた。
ホームステイは、旦那の弟とよりを戻したなどと噂を立てられなくする配慮だった。
同時に三人の子供達を面倒を見ることも念頭においていた。
でもそれでは余計な負担がかかる。
そう思ったアイツの父親は、小学校入学前のアイツを連れて田舎を離れたのだった。
母が一緒に行かなかった本当の訳は、愛していなかったからではない。
子供を望まれても叶えてやれないからだった。
だから別れを切り出したのだった。
だから結婚しなかったのだった。
小さかった兄貴は、私を本当の兄弟だと信じて……
でもアイツは私がイトコだと知っていたのだ。
私は兄貴の言葉を思い出していた。
『知ってるか? あの人は俺達の兄弟なんだぞ』
兄貴は本当に知らなかったのだ。
私が二歳の時海難事故が起きた。
でも元々一緒に暮らしていたようなものだったらしい。
だから兄貴は本当の妹だと信じていたのだった。
私はそれを聞いても、そうなんだと思っていた。
だってアイツが初恋の人だなんて思いもしなかったんだから。
東京でアイツ暮らしていたマンション。
あのダイニングでふと垣間見た仕草にときめいた。
その時急によみがえってきたんだ。
田舎でアイツと暮らしたホームステイの日々が……
その笑顔が私の心を優しく包み込んだ日。
私はアイツに仄かな恋心を抱いた。
思い出と共に溢れ出した愛しさ。
でもそれは兄貴の発言で地獄へ向かう。
私は奈落の底でもがくしかなかったのだ。
姑の看病のために田舎に残った母。
祖母は一進一退を繰り返し数年後に亡くなった。
余命数ヶ月と宣告された時、母はアイツを呼び寄せたのだった。
やはり私とアイツは血の繋がりはなっかた。
いや本当はあるのかもしれない。
ただ本当の兄弟ではなかったと言うことだった。
「だから結婚出来るよ」
アイツが私の手を取り、ゆっくり絡めて握り込む。
小さな私の指が大きなアイツの掌に包みまれた。
「実は……、みさとは俺の初恋の人だったんだ」
母の目を盗んで、アイツは私の耳元で囁いた。
「あのホームステイの時、俺は恥ずかしそうに俯くみさとに恋をしたんだ。どうしようもないくらいときめいたんだ」
アイツは目をキラキラさせながら私を見つめた。
ホームステイは、旦那の弟とよりを戻したなどと噂を立てられなくする配慮だった。


