俺は神野海翔(かいと)。
某有名私立大学の夜間部に通っている。
其処を選んだ理由は……

同じ資格が取れるのに授業料なんかが安いんだ。

昼間と夜では時間割が違う。
講義単位が少ないから、多額の授業料金は貰えない訳だ。

だから俺は頑張って、なるべく全課程に出席してそれを取得しようとしたのだ。




 経済学部卒業。
その肩書きは、人生を変えてくれるかも知れない。

俺はマジでそう思っていた。


そう……
あのハロウィンの日にみさとに再会するまでは。


それに、其処だと四年で卒業出来るからだ。

聞いた話によるともう少し時間がかかる所が多いらしいから。
俺は其処の最終の……
つまり四期生だった。


俺は早く卒業したくて、必死に勉強した。

一年延びるとそれだけお金もかかるからだ。

だからアルバイトにも精を出したんだ。




 誰にも迷惑を掛けたくなかった俺は、とある人の紹介で歌舞伎町のホストクラブで接客アルバイトをすることにしたんだ。

それはボーイと言う、ホストの世話係だった。


でも流石に親父には言えなかった。

親父は真面目にやっていると思っていたはずだ。




 その人とは東南アジアのニューハーフショーで知り合ったんだ。

俺を恋人にしたがっている男友達が、俺を振り向かせるために性転換してしまったんだ。

俺はそれを知らずにノコノコ出掛けたんだ。




 俺は何も知らずに……
いや、本当は気付いていたのかもしれない……


だから結局、其処で襲われそうになっていた。
それを救ってくれたのがあの美魔女社長だった。


『お前のチェリーを捨てさせてくれ。って彼迫られていたのよ。だから未経験だと思ったの。その通りだったでしょう?』

モデル事務所で社長は笑いながら言った。

そっとみさとを見ると頷いていた。


何故だか俺はホッとしていた。
きっとみさとは、俺が本当に初体験だったと言うことを解ってくれたと思っていた。


『あの……、チェリーボーイって何ですか?』

でもその後で、明け透けに聞いたみさとに俺は思わず仰け反った。

それは、想像すらしていない言葉だったのだ。


でもみんな、一瞬声を詰まらせた後で吹き出していた。


知らなくて当然だと思った。

みさとは田舎産まれの田舎育ち。
そんな情報入ってくる訳がないんだ。