盗み聞きを始めた。
 
音をたてないように気を付ける。

 ふふっ

   なんか少し楽しいかもっ…

こっそり、少し笑ってしまう。

 クスクスと笑っていると、
 
 『明日は優羽の誕生日かぁ…早いなぁ…』

いきなり、毎日聞きなれている声が耳に入ってきた。

それは、とても大人な感じの声で、私の好きな声。

その声の持ち主は私のお父さん・美神 彰 (ミカミ アキラ) 

 私の家は美神グループと呼ばれる財閥。

そして、お父さんはそこの社長。

私が言うのもなんだけど、ひいき目で見なくてもお父さんはかなりの美形。

会社のトップにいて、家族がいても人気は留まるところを知らない――

 …て、聞いたことがある。ま、その通りなんだろうけど。 

「うん…早いわね~!あんなに小さかった優羽が…」

お父さんと話しているのはお母さん。

 お母さんの名前は美神 波留(ミカミ ハル)

元お父さんの―社長秘書で、現副社長。

結婚をきつかけに、ずっとなぜか空欄だった〝副社長″になったんだって。

お母さんもお父さんに負けず劣らず美形。

顔は可愛い系でお父さんはきれい系。

美男美女で本当にお似合いだなぁ。と娘の私から見てもいつも思う。

「そういえばあの話は進んでる?」

「…波留…僕にそれを聞かないでくれ…いろいろ複雑なんだよ」

「自分達で言い出したことなのにね。」フフッ

お母さんの笑い声がかすかに聞こえた。
  
お父さん、何が複雑なの?

よくわからない事に頭がくらくらする。

「だから進めてる。僕もそうはいっても少し楽しみだしね」

「―――は元気かしら。優羽とは―――?」