フリーターを始めて1ヶ月になる5月の半ば。




「葵ちゃん」


田辺さんがいつもの柔らかい口調でわたしを呼んだ。



「はい」



田辺さんの方に目を向けると、田辺さんと知らない男が同じ制服を着て立っていた。



「今日から入る新人くんだよ。自己紹介してあげて」



そういえば店長が「早番に新人いれる」とか言ってたことを思い出した。

4人でシフトを回すのは、やはり難しいらしい。



「あ、どうも、初めまして。早番の藤堂葵です。」



背の高い男の人だと思った。

女子の中でもわりと身長の高い方である167センチのわたしの、頭一つ分ほど高いと思う。


180センチくらいだろうか。高校の時は背の低い男子ばかりだったので、自分が男の人を見上げている状態なのが少し新鮮だった。


「……」



男は切れ長の目でわたしを見てぼーっと立っている。


あれ、シカト?
普通に自己紹介したよね?なんか変だった?