されど、時計は右回り




「君が死んだら、悲しいんだ」



それも笑顔で言う奴。言動が一致していない欺きの口だが、聞くなりにまた涙が零れた。


目が覚めたら悪夢がやってくる。見向きもしたくない現実が。


『ずっとここにいたい』そう口にすれば良かったのに、言えば最期。“泣き叫んでしまう”から。


「私も、お前が死んだら、悲しいよ」


一字一句、力を込めて。単に、泣き叫ばないがための力みのはずが――目覚まし代わりにはちょうどいい声。


「私が死ぬことはないのだがね」


意地悪げな返しには、笑みを持って答えてやる。


「私の中から消したくないんだよ」


死んだら最後、お前も消えるじゃないか。奴が死ぬことない、けど消えてしまう。