「私の方が、君を君よりも大切にしているな、これでは」
「そうだろうな」
「そんな君が心配でならないよ」
「お前の方が白々しい。私が崖から飛び降りても、お前の笑顔は変わらないだろうに」
「ああ。君が決めた決断ならば、喜んで見送ろう。最後まで。――けれどそれは、真に君が死ぬと決意した時であって。私が君の中から消え去るまでの話だ」
「忘れられるか。お前みたいな奴」
「そうか。ならば私は、まだまだ君を大切にしよう。私がいる限り、君は“一生救われない”」
「……、ああ」
なんて憎たらしい奴なのだろう。
声は出せないが、頬から伝う涙。たった一粒でも、“いつ以来だ?”と考えてしまうほど久しぶりであり、答えは奴がいる時点で出ていた。


