「殺し方が分からないのか」
「想像もできないよ。自殺も出来ない君を他殺することが」
「……」
結局、振り出しに戻る奴の話。
やはりご都合主義には行かないかと、左腕に爪を立てれば――白のガーゼがとぐろを巻く。
「もう一つ。特別な人が死にたがっているのを、何故見過ごせよう」
「私が死にたがっている時でなくとも、お前は会いに来るがな」
傷が見えない左腕は痛まない。――最初から、痛まなかった。
「夢への招待、ありがとう。目覚めた後が、悪夢だろうな」
皮肉と嫌味をブレンドして吐き出す。
痛まないからかきむしった左腕。夢で働かない痛覚。だったらいっそ、この苦痛もなくなればいいのに。


