私は必死で階段を下りた。早く奈那美先生を病院に!そんな気持ちで。
下りた時、私は何も動かなくなった。
手も足も口も何もかも。ただ呆然と先生を見る事しか出来なかった。奈那美先生は救急車に乗せられた。
「私も行きます!行かせて下さい!」
「ダメです!生徒は教室に戻って!」
「私が奈那美先生を…私が悪いんです!」
「でも…」
「いいです!乗せます!早く乗って!」
「稲木先生…はい!」
私は稲木先生のお陰で救急車に乗れた。
「どういう事だ。」
「…」
「言ってくれ。奈那美先生のためでもあるんだ。」
「…前に否定しましたが、私いじめられてます。」
「あぁ」
「それで今日トイレで美沙に水かけられて、その上バケツも投げられて。
頭から血がでたんです。とりあえず先生に見つからない様に屋上に行こうとしました。そこで拓馬先輩に見つかって、色々聞かれて答えたく無いから逃げました。屋上に。それで屋上についたら、美沙たちがいて…凛奈に屋上の端まで追いやられて。押されたと思ったら奈那美先生が…」
「分かった。」
私は奈那美先生が生きてるか分からないのに、死んでるかもしれないのに、
涙も何も出て来ない。おかしいだろうか。でも出ないものは出ない。無理に出そうとするものでもない。私は自分がどこにいるのか分からなくなった。
奈那美先生に何が起きたのだろう。
私はなんで救急車に乗っているのだろう。
急に息が苦しくなって来た。