冷たい世界の温かい者達







由薇は面倒くさそうなのを一切隠さずにスタート位置についた。




………そういえば、秋谷の言うように、由薇は速いんだろうか。






「由薇は速いぞ?



柏原君は経験してるだろう?」





後ろから、そう声をかけられて振り返ると理事長が笑って立っていた。




視線はあくまで由薇に注がれているが。





「由薇を追いかけて撒かれただろ?



由薇は足が速ければ、視覚についても強いからすぐに撒かれるだろうけど」





苦笑した理事長に口を開こうとした瞬間、ピストルの音が邪魔をした。





黙って由薇を見てみると、男子を差し置いて1位だ。





チビのくせに足の回転が速く、あっという間にゴールしてしまった。






………チビのくせに。




「由薇~鯛はキツいぞー」



『だって、裕人買ってくれるって言った』




「最終的に買うの俺だから」



『………買えよ、志織のくせに」



「どのくせ?!」




理事長に毒を吐いた由薇は俺の影にサッと隠れた。





「………昼飯はお前等で食うみたいだな。




ちゃんと空き教室行って冷房かけろよ?」



『地球温暖化』



「言ってられる暑さじゃねぇだろ」



確かに何もしてなくても暑くて汗が滲む。




由薇も額に薄らと汗を滲ませていた。






「お前に何かあったら由咲に殺されるの俺なんだからな」




『はいはい』



由薇は適当に返事をしてスタスタとテントに歩いて行った。




理事長に頭を軽く下げてから由薇の後をついて行く。





………30分後に借り物か。






面倒くせぇな…





日影に座りながら、ぼぅっと空を眺めていた。