冷たい世界の温かい者達




「チビちゃん」


『そうやって呼ぶな』


「チビちゃん、諦めな」



ケタケタと笑う成一も、種目でめんどくさいのを由薇に押し付けたんだろう。




『………出ない』



「別に、由薇遅くねぇだろ?」



由薇の体を縛った腕の根元に目を向ける。




「………秋谷…」



『裕人………』



「つか、むしろ速い」




笑った秋谷は由薇から手を離して笑った。



『速くない』



後押しで手を振り払った由薇は髪の毛を鬱陶しそうに後ろに流した。




「大丈夫だってー。



観客として由咲に来てもらえよ」




由咲-Yuusa-?



『兄貴になんか絶対言わない』



「あいつは聞きつけて来ると思うけどなぁ〜」



「………聞きつけてくるんですか?」



千尋がパソコンから視線を外して秋谷に聞くと、秋谷は大きく頷いた。





『………』




「当たり前だ。 何たってあいつは由薇溺愛してるからな」



『その言い方やめて。気持ち悪い』




「………じゃぁ、シスコン?」



『もっと嫌よ』



ムッとした表情を見せた由薇に秋谷は笑うと、由薇の頭を撫でて教卓に歩いて行った。




「体育祭くらいはっちゃけろ!



優勝するぞー」





「「「おお!」」」




………うるせぇ。





うん、悪いけどうるせぇわ。




眉間にシワを寄せると、由薇が笑って俺の眉間に指を当てた。



『いつもそんな顔してちゃ、勘違いされるよ。



朔、本当はすごく優しいんだから』






………俺は優しくなんかねぇよ。










お前だけだよ、この鈍感。








複雑な思いを胸にしまいながら、体育祭への憂鬱さを溜息に乗せて吐き出した。