冷たい世界の温かい者達







『………よかった』







「あ?」



『何でもない』





首を振った由薇は嬉しそうに、それでもって悲しそうに目を細めた。






「冷蝶さんは由薇さんっつーんですね!



覚えました!」




孝介がキラキラとした目で由薇に寄っていく。





まぁ、必然的に俺にも寄ってきてることになるんだが。




『………呼び捨てでいい』



「えぇ?! そんな、恐れ多い…」




『敬語もナシで』



「無理ですぅぅうう‼」




………うるさ。




孝介は相変わらずの煩さだ。




だが、それだけ変わらない、というのもあいつの長所だと思ってる。




『………孝介』



「う゛っ………わかりましたよぉ…」




………全然わかってねぇけどな。



「由薇はこれから毎日ここに?」



『うん………まぁ、そんな感じ』





由薇が曖昧に答えたのは、多分用事などでよく抜けるんだろう。




ここ数日でわかったことは、由薇が忙しい人だということだ。







「上行くぞ」



いつもより長話をしたな………




時計を見ながらそう思っていると、由薇が俺を見上げた。



『朔、朔』



「………何だ」




『私も今度バイク持ってきていい?』






その言葉に倉庫全体が静まり返った。




「………お前…持って……」




『私、冷蝶だぞ?』




……そうだった。 こいつは冷蝶だった。 何だかんだですっかり忘れていた。







『ねぇ、朔』




グイグイと服の裾を引っ張ってくる由薇の顔がただでさえちっせぇのに、小さく見えてしょうがない。




「……わかった、また今度な」




『うん』





心なしか、少し嬉しそうに表情を綻ばせた。




バイク、好きなのか。




ぼんやりとそんなことを思いながら上への階段を上がった。