『……んじゃ、帰る』
「お前~。少しは勉強しろよ」
『私がする必要がどこにある?』
「……無いですね、ハイ」
半ベソをかいてる理事長に若干引いてると、由薇は『それじゃ』と颯爽と屋上を去った。
理事長はそれを見届けて、ニコニコしていた顔を扉が閉まった途端無に表情を変えた。
「……ふー。んで、何で冷蝶を?」
先程より少し冷たくなった視線に驚きながら、千尋は口を開いた。
「なぜ貴方にそこまでーーー」
「千尋、」
影助に言葉を止められ、千尋は機嫌が悪そうに口角を下げた。
「……ふぅん。
権限と原因は、お前等2人にあるみたいだな」
「……昔、助けられたんです。
単純に、街で荒れてる俺等を」
影助は珍しく微笑みながら話した。
そう。
あの人達には、本当に感謝をしている。
あのまま腐っていれば、俺はこの世に居ないだろうし、まともでは無かっただろう。
感謝してもしきれない。
「……そ。
まぁ、冷蝶は確かにこの街に居るよ」
「?!何処に…てか、知ってるんすか?!」
理事長の発言に食いつくと、理事長はポケットからタバコを取り出して火をつけた。
「ん~。
まぁ、知ってるっちゃ知ってる」
「なら、何処に……「勘違いするな」
理事長は急に声を低くして、問い詰める衣緒を鋭い目で射抜いた。
「俺はお前等に教える必要も無ければ義理も無い。
それに、俺は冷蝶派だ」
鉄柵に凭れて長い足を片足にかける。
紫煙を吐きながら空を見上げた理事長はあくびを零した。
「……だが、お前等のこれからの行動次第では教えてやるかな。
あいつの為になるなら。」
タバコを携帯灰皿に押し付けて理事長は鉄柵から体を起こした。
「まぁ、頑張れ。
冷蝶はきっと気高い者を好く」
理事長はそれだけ言い残して屋上を出て行った。

