由薇の一言で衣緒はすっかり拗ねてしまい、挙げ句の果て釣りをほっぽり出して部屋に戻ろうとしていた。
まぁ、釣り大会しようって言った本人の欠場は何となく腹が立つので成一に止めさせたが。
「じゃぁ、1番多く取った人は、他の人の言うことを聞くんだよ!」
……そんな条件をつけて、衣緒が機嫌を良くして戻ってきた訳だ。
1番にならないといけないのでさえ面倒くさい。
だけど、負けたらもっと面倒くさい。
溜息を吐いて針を川に投げ入れる。
「何か、朔の投げ方地味!
こうやって投げるんだよ!」
バッと漫画かドラマでありそうなほど大きく振りかぶって投げ入れようとした針。
だが、お約束のように針は岩に引っかかって衣緒が後ろに引っ張られ、どさっと座っていた岩から落ちた。
……ダッセ。
「ダッセ。」
成一は隣の岩に座り、竿を揺らしながら蔑むように衣緒を見下げた。
「いったーーー‼
意味わかんないし‼ 何この竿嫌い‼」
……責任転嫁すんじゃねぇよ。
「八つ当たりか」
「はぁ?!」
何が「はぁ?!」だ。
アホにもほどがあるぞ。
「……もう大人しくする」
ペッと針を雑に投げ入れて、衣緒は膝を抱えて再び岩に座った。
由薇は眠いのか、俺の横に座りながらカクカクと首を揺らしていた。
……倒れそうで怖ぇ。
背中をそっと支えると、ほんわりと温かみのあるスベスベの肌が手に触れた。
「……」
濡れた髪や、運動した後だからか火照ったピンクの頬。
規則正しい息を吐くピンクの唇。
……何か、エロい。
思わず目を逸らすと、こっちを見ていた成一と目が合った。
成一はニヤリと笑って口パクをした。
……何を言ったかは想像に任せる。
とてもじゃないが、俺は言えないし言わない。

