『理事長室行くけど、大丈夫?』
「それはいいけど……何で大丈夫?」
『……啓さんは凄い人だから』
笑った由薇はいつもより笑みが多い。
そのことに驚きながらも、由薇について理事室に向かう。
ガチャ、と今日は控えめに開けられた相も変わらずでかい扉。
『啓さん?』
その声には期待と喜びが伺えた。
「……由薇?」
由薇の名を呼ぶ声は、愛に溢れていた。
理事室には、ソファに座った見慣れた理事長(仮)と見たことのなかったダンディーな男の人。
『久しぶりだね』
「元気にやってたか?」
『……うん。』
「嘘だぜ。 コイツ飯食わねぇの」
『……チッ』
余計なことを、と言いたげに舌打ちした由薇にゲラゲラと理事長(仮)は笑った。
「由薇、昔から食えって言ってるだろ?」
『……』
「ったく……由咲は? 最近本家ばっかりなのか?」
『んーん…3日に一回は来る』
「…はぁ、由咲は由薇に甘すぎだな」
溜息を吐いた男性は俺達を視界に捉えてニコリと微笑んだ。
「あぁ…君達が、最近転校して来た由薇を探してた子か?」
「あ…まぁ、はい」
詳しくは由薇ではなく冷蝶だが。
まぁ、そんなことあまり気にすることでも無いだろう。
俺の腕の中で寝ている柚紀を見て、男性は気づいたように口を開いた。
「………その子か? 裕樹と亜騎がヤケに気にかけていた子どもは」
『うん。 亜騎も結構気にしてるの?』
「まぁ………そうだな。 気にしてた。
自分に何か共感させられるモノがあったんじゃないか?」
『………そだね。
それはそうと、この人は日代 啓さん。本当の理事長だよ』
「………初めまして」
穏やかな男性は、とてもじゃないが理事長(仮)と親子には見えなかった。

