「この人はいい人だよ」
それを聞いた時、あんまりそう思わなかった。
だけど、何を言える訳でもなく、ただ頷いた。
また綺麗な女の人は来ていたけど、お父さんが会社に行くとかでバタバタと出て行ってしまった。
なんとなく怖くなって部屋に戻ろうとすると、女の人は不気味に微笑んで「話をしようか」と言った。
「柚紀くんはお父さんにあんまり似てないね?」
みんなにも言われる。
俺はお母さん似だと。
それに頷いてお母さん似だと言うと、ずっと微笑んでいた女の人の顔が鬼の形相へと変化した。
「あんたのせいよ‼
私があの人と結婚できないのもっ
あの人が前の妻をまだ見ていることも‼
全部っ………お前のせいよ‼」
そんなことを言われて、包丁を持った女の人を見てパニックになった俺は咄嗟に電話をとった。
学校の友達とか、警察とかーーー
ガンッ
女の人は電話機を投げ捨てて俺に馬乗りになった。
「殺してあげる。
あの人の為にも、それが最善よ…ふふ」
瞳孔を開ききった目は血走っていて、とてもじゃないが今の顔は綺麗とは言えない。
「お父さん‼ ああああぁぁぁ‼」
「黙れっ‼クソ餓鬼が‼」
ガチャッ
「柚紀………?!
麻帆…お前、何やって……」
「あら、雄佐さん……ふふ。
大丈夫よ。 今すぐ、こんな子……
殺してあげるから」
「麻帆……?!」
俺の左上半身にむかって包丁の刃が向けられる。
「ああぁぁあ‼」
グシャ
予想以上にエグい音を立てた。
涙は止まることを知らずに流れる。
だけど、痛みは一向にこなくて……視界を綺麗にして飛び込んできたのは、
血に染まったお父さんの背中だった。

