『……わかった。 今すぐ向かう』
由薇は自室から着替えて戻って来ると、その言葉を最後に電話を切った。
「……」
驚いたのは、その格好だ。
黒いスーツ姿。
あまりにも似合いすぎていて、少し負けた気がした。
『悪いけど、私今から出るからこの子よろしくね』
柚紀の頭をくしゃっと撫でて、由薇は颯爽とリビングから出て行ってしまった。
…このガキを、面倒だと…………?
無理だ。
「お前たちなんか、由薇にとって“ふりえき”だ」
…………クソガキ。
脳内の糸は既に5本ほど切れたが、さすがに子供をどうこうするほどバカではない。
千尋はパソコンから目を上げてニコリと笑った。
「…………じゃぁ、勝負をしようか」

